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熟年ばんざいインタビュー
●【生きる指針のコーナー】第8号(2005年3月号)目次
1-俳優・声優 増岡弘さん(68) インタビュー
2-サークル紹介 「コーラスパピヨン」
所沢を耕し食を楽しむ

マスオさんに聞く こだわり生活

畑を耕し、味噌を仕込み、自己流の焼き物を楽しむ――そんなこだわりの暮らしを、所沢で実践している人がいる。「サザエさん」のマスオさん役でお馴染みの増岡弘さんだ。ご自身で建てられたという木の温もり溢れるご自宅でお話を伺った。

増岡弘さん
自宅近くの畑の前で

季節が育む野菜を食す
増岡さんは近所に借りた200坪の畑で、60種類の野菜を育てている。食べ物との関わりには拘りがある。「花が咲いて実が生って、熟すまでは食べたくても食べないで我慢して、ようやく食べる。これが本当です」。ハッとした。お金さえ出せば季節外品だろうが、外国産だろうが、すぐ手に入る――そんな生活に染まっている私たちが、すっかり失くしてしまった感覚だった。「12月が暖かかったおかげで、今年のカブはきめ細かくて瑞々しいですよ。」ゆっくり過ぎていく季節と共に、大地に根ざして生きている増岡さん。効率とか、スピードとか、便利とか、そんなものとは無縁の本当の豊かさを感じた。

耕すこと、人と自然
「ものを育てるのは人間の基本の欲望」。だから畑仕事に苦労は感じないそうだ。こんな言葉も。「野菜を育てるのは、大地と空気と光と天気。人間は神様じゃない。雨を降らせることも出来ないし、水をまいてもたかが知れています。人間ができるのは野菜を育てる環境作りだけ。」奢らず、地球に寄り添う気持ちが伝わる。なるほど、畑作りは奥が深いらしい。作る楽しみや、食べる楽しみだけでなく、自然と人の本来のあり方に立ち戻れるのが魅力のようだ。

人を良くすると書いて「食」
増岡さんの冬の年中行事は味噌作り。手作りの味噌は、体に酵母を届ける「生きた味噌」なんだとか。ここにも「食べることは大切」という増岡さんの拘りが見て取れる。味噌作りの仲間のエピソードを紹介していただいた。「味噌の仕込みを手伝った子供が、お母さんに『味噌は私たちを作ってるんだね』といったそうなんです。食べ物ってそういうもの。人を良くするとかいて『食』なんです。」確かにその通り!形だけ整えられた野菜やニセモノの味噌や醤油――私たちの日常に溢れる食品は、本当に「人を良くする」ものなのだろうか? 出来ることからでいいから、もう少しキチンと「食」と関わらなくては…、そんな気持ちになった。

食べることは楽しい
増岡さんが「『心の食べ物』です」と力説するのが、お弁当。収録の時も、食べられるときは、お気に入りのお茶を添えて持参するのだとか。もちろん、作るのはご自身。「食べることは楽しいですから」とニッコリ。定番のメニューを聞いてみた。「自家製の梅干。それから生鮭に好みの塩梅で塩をして作った塩鮭。肉厚でね、皮がぱりっとして美味しいんですよ。海苔もいい海苔を入れてね。」さすがはプロ、聞いているこっちの方まで「美味しい気持ち」になってしまう。増岡さんご自身も、すっかり食いしん坊顔に。そのお顔を拝見して、わかったことがある。小難しい理屈はさておき、野菜を作ったり、味噌を作ったりといった「拘り生活」の原動力になっているのは、「美味しいものが好き」という単純な気持ちなのだ。食を楽しみ、ホンモノを美味しく食べる。至極明快だ。

熟年世代へのエール
さて、ここで熟年世代への増岡さんのメッセージを紹介しよう。今流行の定年帰農については「大いにやってください。経済活動がすべてという時間を送ってきたと思うから。花を作ったり、自然に親しむのは、人間が本来持っている能力です」と大推進。それからこんな言葉も。「『自分はこうだ』と決め込まない。なんだってできます。ただ、やるからには『鬼』にならないと。それからたまには思い切ったことをしてみる。精神は柔軟なままで。」好きな言葉は「いつも青春、いつまでも青春」、そんな増岡さんらしいエールだった。

インタビューの後、畑に案内していただいた。そこは線路脇、住宅街にぽっかりと広がった青空の下にあった。風が気持ちいい。畑は季節柄寂しげだったが、立ち並ぶ梅の木々には小さな赤い蕾が。これがご自慢の梅干になるわけだ。そう思ったら自然と口元が緩んでしまった。(ライター 西村信子)

※増岡弘さんの著作「陽だまりのマスオさん」のサイン本を抽選で1名様にプレゼント。 ご希望の方は編集室まで葉書で。(3月10日必着)

増岡弘さん 増岡弘(ますおかひろし)

1936年生まれの68歳。舞台美術の仕事から役者に転向、現在は声優・ナレーターとして活躍。特に『サザエさん』のマスオ役で知られる。舞台人としては、自ら代表を務める劇団東京ルネッサンスで「群読」に力を入れている。柳家さん助門下の益々家ちゃん助として落語も。最近はまっていることは、お嬢さんと行く海外旅行。収録のない時期を狙って、年間45日くらいは日本脱出をするのだとか。
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