宮内 淳さん
世界の環境を知ることで、
人間らしさを取り戻そう
伝説のテレビドラマ「太陽にほえろ!」のボン刑事役で人気を博した宮内淳さんが、俳優業から転身、現在最も力を入れているのが環境問題だという。
「といっても、環境問題に取り組むということは、地球を助けるのではなく、私たち人間を助けることなんです」と、語り始めたのは熟年世代へのエールでもあった
開発途上国に学んだ人間関係
「僕は15年ほど前、テレビ番組で世界80数カ国をまわりました。それも南極やサバンナの奥地など、いわゆる秘境ばかりです。そこでは家族単位、村単位が固い信頼関係で結ばれている。子どもたちに聞くと、まず一番偉いのがおじいさん、次はお父さん。それから兄、そして自分たち、というふうに序列が決まっています。なぜかというと、厳しい自然の中で、彼らは狩をしたり植物を食べたりして生きている。その最も有効な方法をよく知っているのは、長く生きて経験を積んでいるおじいさんなんです。村でいえば長老ですね。智恵と経験のある者が、一番尊敬されるわけです」。…これが日本だと、さてどうだろう? だいたい日本の子どもは、お母さんの言うことはまあ聞いても、お父さんをあまり尊敬していないらしい。おまけに老人は隅に追いやられている。最もお金をかけ、大事にされているのが子ども、という家庭が多いのではないか。「だから僕は、秘境や途上国をまわって日本に帰ってくると、経済は豊かでも、何か大切なものを忘れていると感じる。大地を踏んで、地元のものを食べて育った人間と、そうでない人間とは明らかに違うと思ったのです」。そのあたりから、宮内さんは世界の環境問題に自然に目を向けるようになったのだという。
ユネップ(UNEP=国連環境計画)とは
そこで現在やっているのが、ユネップの広報活動だ。日本ではあまり知られていないが、ユネップはユネスコやユニセフと同じ位置づけの国連の機関である。「僕が主宰している影絵劇団かしの樹で、10年ほど前に『地球の秘密』という影絵ミュージカル作品を上演しました。この原作は、当時小学校6年生だった坪田愛華ちゃん(故人)が環境問題をマンガに仕立てたもので、国連の永久保存版として世界中で発行されました。ここからユネップとのご縁ができ、2年前にNPO法人世界環境写真展を立ち上げる運びとなったのです」。その活動としては、ユネップ主催の世界環境フォトコンテストにおける優秀作品を日本およびアジアで巡回展示することと、今年からユネップの公式機関誌「Our Planet」と「TUNZA」の日本語版を発行していくこと。これは世界120カ国以上で広く読まれている環境情報誌にもかかわらず、日本には入ってきていなかったのだという。
ベトナムにて |
「環境問題を取り上げたイベントやプログラムはたくさんありますが、僕はまず子どもが見てわかりやすいもの、感動するものをやっていきたいと思った。一枚の写真を見る時、大人は説明文があればそれを読みますが、子どもはダイレクトに心で受け取って、鋭い質問までしてきます。また機関誌でいえば、TUNZAは青少年向けに、イラストやコラムなどでわかりやすく、楽しく世界の環境について学べるようになっています。こういうテキストを、どんどん学校教育の場やワークショップなどで活用してもらいたいですね」
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心の環境をととのえよう
最後に、ある秘境の村の話を一つ。「こんなことがありました。たずねると約束していながら、僕たちは慣れない山道で往生して、予定を大幅に遅れてしまったのです。すると、はるか向こうから村人たちの一行が、ぞろぞろ歩いてやってくるではありませんか。びっくりして聞いてみると、何と山をいくつも越えて、3日もかけて来た、と」。仰天する宮内さんたちに、長老が言ったのはひとこと、「約束の日に来ないから、心配で迎えにきたんだよ」。たったそれだけのために、はるばる歩いて来てくれた・・・。そういうあたたかさを、われわれ日本人はどこかに置いてきてしまったのではないだろうか。「そんな純粋さ、相手のことを思いやる気持ちを、世界の環境問題を通して取り戻すことが、今いちばん必要ではないかと思うんです」。そして宮内さんは、こういう大事な時に、智恵と経験を積んだ熟年世代として生きていることには、きっと何かの意味があるはずだという。「皆さん、一緒に頑張りましょう!」。
| 環境問題について熱く語ってくれた宮内さん。その根底にあるのは、人に対する愛情だと感じた。相変わらずの長身と甘いマスク。目の輝きと、情熱は人を惹きつけるオーラがあった。 |

パフアニューギニアにて |
宮内 淳 (みやうち・じゅん)
1950年5月28日、愛媛県生まれ。55歳。
テレビ出演…NTV「太陽にほえろ!」、NTV「あさひが丘の大統領」、
ANB「地球キャッチミー」、TBS「ザ・プレゼンター」等多数。
「影絵劇団かしの樹」主宰、NPO法人世界環境写真展理事長
番組で世界80数ヶ国をまわり、人間本来の生き方にふれて歩いた経験から、地球環境問題と子供の情操教育にも力を注ぐ。
影絵劇団かしの樹では、1992年に明石康・国連特別代表の協力のもと、カンボジアにて民間P.K.O.第1号公演を敢行。
1995年には<世界子供環境会議>準備委員長として、英国サッチャー首相を埼玉県に招聘。 現在は、NPO法人世界環境写真展理事長として、アジアを中心にUNEP世界環境写真展を展開中。 |